国民投票で選ばれるインドネシアの大統領。2億6千万人もの人口を有するインドネシアはインドネシア国内のみならず、諸外国にも影響があることは明らか。5年間の任期がある大統領は、向こう5年の経済・政治・国内情勢を左右するといっても過言ではありません。
そんなインドネシアの大統領について
- インドネシアの現職の大統領はどんな人?
- 2019年4月のインドネシア大統領選挙の行方は?
- インドネシアの大統領選挙とイスラム教の関係は?
と疑問を抱いているあなた。
インドネシアの国家元首である大統領は駐在や出張で来る場合は知っておきたい基本知識。インドネシアの大統領と大統領選挙の行方について知りたい方は是非参考にしてください。
記事の目次
現在の大統領はジョコ・ウィドド(通称:ジョコウィ)
2014年10月に就任したインドネシアの現職の大統領はジョコ・ウィドド。通称ジョコウィと呼ばれ、インドネシア初の庶民派の大統領として約53%の得票率で当選しました。貧困家庭で育ったジョコウィはガジャ・マダ大学の林業学部を卒業後、木工業会社を経て家具製造会社を設立。倒産の窮地を脱し、ヨーロッパ企業とのビジネスで業績を伸ばしました。
政界に進出したのは44歳の2005年。人口50万人ほどの中部ジャワ州のスラカルタ市長に当選し、ペデストリアンや市場などの都市開発で市民の支持を得ました。2010年の市長選挙では90%以上の得票率で再選しています。
2012年からはジャカルタ特別州知事に就任。汚職疑惑のある州政府幹部の更迭や低所得者向けの医療サービスなど、市民に寄り添った改革を推し進めました。
2014年には元大統領のメガワティの支持を得てプラボウォとの対決を制し、大統領に。2019年4月の大統領選挙でも2期目の当選を目指しています。
大統領選挙はジョコウィv.s.元軍人のプラボウォ
プラボウォ・スビアント・ジョヨハディクスモはインドネシアの名家出身。プラボウォの父親は産業貿易大臣や国務大臣を経験した元政治家、インドネシアの元大統領のスハルトを義父、祖父はインドネシア国立銀行の初代総裁。また、ヌサンタラ・エネルギーグループを設立し、鉱山などの事業を手掛ける資産家でもあります。
インドネシアの大統領選挙は2014年、2019年共にジョコウィとプラボウォの一騎打ちの選挙戦となります。2009年にはユドヨノとの大統領選に僅差で敗戦。元軍人ということもあり、2019年の大統領選では安全保障に関する公約も掲げており、ジョコウィと比較するとナショナリズムを押し出している傾向にあるといえます。また、ジョコウィのインフラ政策を批判するなど、ジョコウィが取り込めていない地方票の獲得を狙っているともいわれています。
ジャカルタ州知事時代にジョコウィの人気が出て、2014年の大統領選挙で一騎打ちに。「ジョコウィは偽ムスリム」「ジョコウィは共産主義者」などのネガティブキャンペーンを展開。ジョコウィには6%差の僅差で敗れました。
知っておきたいアホック氏
プラボウォは、2012年にジョコウィがジャカルタ特別州知事に当選した選挙では、華人のバスキ・プルナマ(通称:アホック)を副知事にすることを条件にジョコウィを支援。庶民派ジョコウィを支援することで得られるプラスのイメージ、マイノリティの華人を支持することで軍人時代のマイナスイメージの払拭を狙ったとされています。結果としてジョコウィが当選し、アホックが副知事に。
尚、キリスト教徒でジャカルタ前知事のアホックは「(キリスト教徒の)私に投票すれば地獄に落ちると思っているのでしょう。」と発言し、数万人規模のデモに発展。その後、宗教冒とく罪で禁固2年の実刑判決を受けました。
過去のインドネシアの大統領一覧
指名 | 任期 | 備考 |
---|---|---|
スカルノ | 1945年~1968年 | 初代大統領/無所属 |
スハルト | 1968年~1998年 | ゴルカル党 |
ハビビ | 1998年~1999年 | ゴルカル党 |
ワヒド(グス・ドゥール) | 1999年~2001年 | 国民覚醒党(PKB) |
メガワティ | 2001年~2004年 | スハルトの長女/闘争民主党(PDI-P) |
ユドヨノ | 2004年~2014年 | 民主党 |
ワヒド(グス・ドゥール) | 1999年~2001年 | 国民覚醒党(PKB) |
ウィドド | 2014年~ | 闘争民主党(PDI-P) |
スカルノ初代大統領は奥様がデヴィ夫人として知られています。インドネシア独立後の初代大統領として、現在はジャカルタの国際空港にもその名が使われるほど。その後、軍人や財界出身者、宗教指導者などの経歴を持つ人が大統領に。歴代大統領7人中、軍出身者が3人います。
2019年の大統領選挙のポイント
インドネシアの大統領選のカギを握るのがインフラ開発。国民が重視する分野の約25%がインフラ開発です。ジョコウィは現在推し進めているMRT、高速鉄道などをアピールするも、プラボウォは「開発効果が悪く、事業で損失を出している」と指摘。鉄道などで日系企業も関係するインフラ開発は注視したいポイントです。
また、人口の9割近くがイスラム教徒であるインドネシアでは、大統領選でもイスラム教徒の支持はとても重要。これまでイスラム団体などの関係が希薄だったジョコウィは、2014年の大統領選ではプラボウォを支持していたイスラム組織の前総裁を副大統領候補に添えます。
加えて重要になのが人口の多くを占める若者層からの支持。プラボウォはジャカルタ副知事で若い層に人気のある実業家のサンディアガ(49)を副大統領候補に指名しました。ジャカルタ副知事として当選してはいるものの、まだ政治経験は浅い状況。
また、サンディアガ氏はパナマ文書にも名前が記載されており、グレーな一面も。経済政策を押し出すプラボウォ氏のサポートとして抜擢されました。1980年以降生まれの有権者は5割超のインドネシア。大統領選でも若者の支持はカギを握ることになりそうです。
インドネシアの大統領まとめ
PwCによると、2030年にインドネシアのGDPは世界5位になり、2050年には4位になる可能性もあるとされています。しかし、それには持続的で効果的なインフラ投資、政治や経済、社会制度の改善が必要。
5年間の任期があるインドネシアの大統領。2019年2月末時点ではジョコウィが優勢と報道されています。経済大国になると予想されるインドネシアの成長を左右するのは2019年の大統領選かもしれません。